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問題の発端:過小な税収見積もりとその根拠
2024年度予算審議の過程において、日本維新の会・柳ヶ瀬裕文参議院議員による財務省への追及が注目を集めている。議論の核心にあるのは、「税収弾性値1.1」という数値の妥当性である。
税収弾性値とは、名目GDPが1%成長した際に税収が何%増加するかを示す係数である。財務省はこの数値を基に将来の税収を予測し、予算編成に活用している。柳ヶ瀬議員は、近年の決算と試算との乖離──すなわち年間約10兆円もの税収過小見積もり──の根拠に、この弾性値1.1の恣意的な使用があると指摘する。
税収弾性値の恣意的操作疑惑
実際、財務省は令和6年度高年度影響試算において、昭和51年度から令和元年度までの44年間の平均として税収弾性値1.1を採用した。しかし、過去10年間(平成22年~令和元年)に限定した平均では3.23という大幅に高い値が導き出される。財務省はかつて「過去10年の平均を採用している」と説明してきたが、近年では「長期平均」へと基準を変更している。柳ヶ瀬議員はこれを「都合が悪くなると平均期間を操作する行為」であり、「1.1ありきの設定だ」と厳しく批判した。
財政運営への影響と国民生活
この税収過小見積もりは、増税の正当化や減税の回避、国債発行の水増し、財政赤字の過剰な演出に繋がり、財政運営そのものを誤らせる結果を生んできた可能性がある。柳ヶ瀬議員は、アメリカやイギリスで採用されているような多変数のマクロ経済モデルによる予測を提案し、財務省の恣意性排除と透明性確保を求めている。
財務省設置法・財政法の構造的問題
さらに議員は、財務省設置法に「経済成長の実現」を明記すべきであり、財政法第4条も見直して赤字国債の活用を正面から制度化する必要があると主張する。現行制度では、財務省は「健全な財政運営」のみに責務を負っており、経済成長はその対象外である。これが「経済あっての財政」という基本理念の実現を阻害しているという問題意識がそこにはある。
財務省・政府の見解と応答
対して財務省および政府は、「弾性値の長期平均採用は短期的な景気変動による偏りを防ぐため」「税収予測には目的に応じた複数の手法を併用している」と反論している。しかしながら、柳ヶ瀬議員の追及に対しては一部理解を示し、「改善の余地がある」との答弁もなされた。
結語:財政運営の根幹を問う
本件は単なる数値論争にとどまらず、日本の財政運営の在り方、そして官僚機構の説明責任にまで踏み込むものである。失われた30年の根因を探る上でも、「税収弾性値1.1」という呪縛が持つ意味を国民一人ひとりが考える契機となるべきだ。
今後の国会審議と制度改正の動向が注目される。