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単元未満株サービス比較:SBIの「S株」と楽天の「かぶミニ」

日本の主要ネット証券であるSBI証券と楽天証券は、それぞれ「単元未満株取引」に対応した独自サービスを提供している。SBI証券では「S株」、楽天証券では「かぶミニ」と呼ばれるこれらのサービスは、表面的には「少額で株が買える」ことを共通点としているが、実際の仕組みやコスト構造には明確な違いが存在する。

本稿では、S株とかぶミニを比較し、それぞれの長所・短所、適した投資スタイルについて詳しく解説する。

目次

取引の仕組み:リアルタイム性と約定タイミングの違い

SBI証券のS株は、1日3回の約定タイミングで注文が成立する「時間指定型」取引である。 対して、楽天証券のかぶミニはリアルタイムで取引価格が提示され、すぐに売買が成立する「リアルタイム型」の形式を採用している。

S株の約定タイミングは以下の通り:

  • 午前の寄付き(前場始値)
  • 午後の寄付き(後場始値)
  • 大引け(後場終値)

このため、注文を出した時点で価格が確定せず、実際にどの価格で取引されるかは、該当する約定タイミングまで分からない。一方で、かぶミニは楽天が提示する価格(参考市場価格にスプレッドを加えたもの)で即時に売買が成立するため、スピーディな取引が可能である。

ただし、かぶミニの提示価格は必ずしも東証のリアルな板価格とは一致せず、証券会社がスプレッドを含んだ独自の価格を提示している点には注意が必要である。

コスト構造:スプレッドの有無と取引コスト

S株最大のメリットは、売買手数料とスプレッドの両方がゼロであること。SBI証券は2023年以降、S株の取引にかかる手数料を完全無料化し、かつ楽天のようなスプレッドも設定していない。

これに対して、楽天証券のかぶミニでは、取引価格に0.22%のスプレッドが上乗せ・下乗せされている。例えば、実際の株価が1,000円の場合、買値は1,002.2円、売値は997.8円になる。

つまり、かぶミニではスプレッドが実質的な取引コストとなっており、何度も売買を繰り返すようなスタイルではコストがかさむ可能性がある。

板取引の有無:市場との接続の違い

S株もかぶミニも、いずれも「板取引」ではない。市場の板に直接注文を出すのではなく、証券会社が顧客の注文を一括して市場で執行するか、店頭で相対的に売買を行う方式である。

ただし、S株は実際に市場価格で執行されるため、価格操作やスプレッドの懸念は低い。対して、かぶミニは楽天が提示する価格で直接売買されるため、あくまで楽天との相対取引であり、提示価格の正当性や市場との乖離に注意が必要である。

また、市場が閑散としている時間帯や、特定銘柄の流動性が低い場合には、かぶミニで「価格はあるのに売買が成立しない」というケースも生じうる。これは、あくまで楽天が取引の相手方となっているためであり、板取引にはない性質である。

どちらを選ぶべきか?投資スタイル別に考える

長期的に保有し、細かい取引をしない投資家にとっては、コストの安さと市場価格への忠実性からS株が有利である。特に、資産形成の一環として単元未満株を用いる場合、スプレッドが無いという点は大きな強みとなる。

一方で、かぶミニは「今この瞬間に買いたい/売りたい」というニーズに応えてくれる。リアルタイムで価格が提示されるため、時間の制約がある中でも取引を成立させやすく、UX(ユーザー体験)としては優れている。

投資初心者や、「株価が上がっているときにすぐ買いたい」といった直感的な投資行動には、かぶミニのリアルタイム性は魅力的だ。

ただし、スプレッドによるコストが蓄積すると、資産形成の効率を下げる原因にもなりうるため、自身の投資スタイルと目的を明確にしたうえで選択することが重要である。

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