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ReactとVueの人気・使用動向(2016〜2025年)

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GitHubスター数と開発アクティビティ

Reactは2016年時点で既にFacebook発の人気ライブラリとして多くのスターを集めていました。一方、Vueは2016年頃からコミュニティで注目され始め、2017〜2018年にかけてGitHubのスター数が急増します。その結果、2018年6月にはVueの累計スター数がReactを追い抜き、Dan Abramov(React開発者)が祝福のツイートをするほどの出来事となりました。この「スター逆転」以降、Vueはしばらくスター数でReactを上回り、2022年頃でもVue(約199k)がReact(約195k)を僅かにリードしていました。

しかしその後、Reactも着実にスターを伸ばし、2023年〜2024年までに再び逆転します。2024年時点ではReactが230k超、Vueは約208kと、Reactが再度リードしています。つまりスター数の推移では2018年頃にVueがReactを逆転し、その後2020年代前半にReactが巻き返して再逆転した形です。スター数は必ずしも実利用を反映しない指標ですが、コミュニティの関心の移り変わりを示すものとして注目されました(実際、Apacheなど実利用が圧倒的なソフトでもスターは少ない例があります)。

リポジトリのアクティビティ面では、ReactはFacebook主導ということもあり初期から多数のコントリビューターを擁して開発が進められてきました。例えば2018年時点での累計コントリビューター数はReactが1192人と桁違いで、Vueは189人に留まっていました。またコミット数を見ると、当時Vueの全コミットの約79%を創始者のEvan You氏が占めていたのに対し、Reactではどの個人も10%未満であり、より分散した体制でした。こうした違いから、Reactは大規模チームによる安定開発、Vueは少数精鋭による急速な機能拡張という傾向が見られました。ただしVueもその後はコアチームが拡充され、2020年のVue 3リリース前後にはコミットやコントリビューターも増加し、2025年に至るまで活発な開発が続けられています。一方のReactもReact 18(2022年)など継続的なアップデートが行われており、双方ともコミュニティ主導のオープンソース開発が安定して継続しています。

NPMダウンロード数の推移

NPMダウンロード数は実際の利用度合いを示す代表的な指標です。2016年時点ではReactパッケージのダウンロード数がVueの約12倍にも達しており(React約169万/月に対しVue約14万/月)、Reactの実利用が圧倒的でした。Vueは当初CDN経由の利用も多く、中国では独自のnpmミラーが使われるケースもありましたが、それらを考慮しても当時の利用差は非常に大きいものでした。

その後、Vueの採用が増えるにつれNPMダウンロード数の差は縮まっていきます。2018年半ばにはReact:Vueの比率が約7:1(React約938万/月、Vue約137万/月)まで縮小しました。さらに2020年代に入ってもVueの成長は続き、2022年時点ではReactが週あたり約1,690万、Vueが約356万ダウンロードと、およそ5:1前後の比率にまで差が縮まっています。これはVueが後発ながら着実に利用者を増やしたことを示します。

もっともダウンロード総数では終始ReactがVueを上回っており、差の絶対値自体は拡大しています。2024年頃にはReactが週あたり3,200万超のダウンロード数と過去最高水準を記録し、Vueも週640万超と健闘しましたが、依然として約5倍の開きがあります。つまり比率的には2016年の12倍から2020年代の5倍程度まで縮小したものの、React優勢という構図自体は変わっていません。これは大企業や既存プロジェクトでのReact利用が継続的に増加し続けたこと、そしてVueも一定の普及を遂げつつも用途や地域によっては限られていたことが背景にあります。

Google検索トレンドの関心推移

Googleトレンドによる検索関心では、2016年以降一貫してReactがVueを上回っています。Reactは2015年前後から急激に注目を集め、2016年以降は検索ボリュームでトップクラスのフロントエンド技術でした。Vueも2017年頃から関心が高まり始め、特に2018年前後には大きな注目を集めましたが、それでも検索ボリュームでReactの背後に留まる状況でした。

直近5年間(2020〜2025年)を見ると、Vueの検索関心は概ね安定からやや減少傾向にあります。2020-2021年頃はVue 3リリース(2020年秋)に伴い一時的に検索数が増える動きも見られましたが、その後は勢いが落ち着き、相対的にReactとの差が再び開いています。一方Reactは同期間を通じて高い関心を維持し続け、グローバルな検索興味ではReactが常に優勢です。2025年時点でも、React > Angular > Vue ≈ Svelteという順序で検索人気が推移しており、Vueは依然Reactより下位に位置します。要約すると、Google検索トレンドでは2016年から2025年を通じてReactの人気がVueを上回り続け、Vueに一時的な関心の山はあっても逆転には至りませんでした。

Stack Overflowにおける質問数の推移

Stack Overflowのタグ別質問数も、ReactとVueのコミュニティ規模を示す興味深い指標です。Reactは公開から間もない2013年頃から開発者に利用され始め、2016年時点で既に多数の質問が蓄積されていました。一方Vueの質問は2016年頃までは少数でしたが、その後フレームワークの普及とともに急増しました。それでも質問数全体では終始Reactタグの方が多く、VueがReactを上回った時期はありません。

具体的な累計質問数を見ると、差は歴然としています。たとえば2024年10月時点で、React(reactjsタグ)関連の質問は48万件超と膨大であるのに対し、Vue(vue.jsタグ)は約10.8万件に留まります。この差はおよそ4.5倍に相当し、依然Reactの方が開発者人口・関心ともに大きいことを反映しています。しかし相対的な差分は徐々に縮小してきました。Vueの質問数比率は2016年頃にはReactの一割以下でしたが、その後コミュニティ拡大に伴い上昇しています(2024年時点ではVue質問数はReactの約22%程度)。つまり絶対数ではReact優位の差が年々積み上がる一方で、Vueもコミュニティを着実に拡大し質問数シェアを高めたといえます。これはVue利用者が増えたこと、そしてStack Overflow上でもそれなりの活発さが維持されたことを示しています。

なお、Stack Overflowの開発者調査などでは「最も愛されているフレームワーク」や「利用意向」などでVueが上位に来る年もありましたが、実際の質問投稿数においてはReactが常にトップでした。その背景には、Reactが企業・個人を問わず幅広く使われ続けたこと、そしてVueの情報交換がGitHubやフォーラム、非英語圏コミュニティなどStack Overflow以外にも分散していた可能性も考えられます。

総括:2016〜2025年の傾向まとめ

2016年から2025年にかけてのReactとVueの人気推移を総合すると、Reactは全期間を通じて主要指標(利用数や関心)で首位を守り、Vueは後発ながら急成長して差を縮めたという構図でした。GitHubスター数では2018年にVueが一度逆転する出来事がありましたが、それはコミュニティの盛り上がりを象徴するものでした。その後はReactが利用実績の強さを背景に再び人気を押し戻し、スター数含め再逆転しています。NPMダウンロードやStack Overflow質問といった実利用に近い指標では終始Reactが大きく先行しつつも、Vueの台頭によって相対的な差は徐々に縮まる傾向が見られました。Google検索トレンドでもReactの関心が常に上回り、Vueは一度も検索人気で追い抜くには至りませんでした。

総体として、Reactは2016年以降安定した成長を遂げデファクトスタンダードの地位を固めました。一方Vueは2016年以降の数年間で急速にコミュニティと採用を拡大し、Reactに次ぐ有力フレームワークとして定着したと言えます。特に2018年前後はVueブームとも言える盛り上がりがありましたが、その後はReactエコシステム(周辺ライブラリや企業採用)の強さが際立ち、2020年代中盤には両者の立ち位置は「Reactが依然トップ、Vueがそれを追う」という安定した関係に落ち着いています。もっともVueもニッチに留まったわけではなく、スター数逆転のエピソードや堅調な利用拡大に見られるように、この10年で確固たる第二の選択肢として台頭した点は特筆に値します。今後もReactの巨大なコミュニティとVueの熱心なコミュニティが競い合い、それぞれの長所を伸ばしながら発展していく傾向が続くと予想されます。

参考資料:React/Vue公式GitHubリポジトリのスター推移、npm統計データ、Googleトレンド分析、Stack Overflowタグ集計など。

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