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CFAフランとは何か?フランスとアフリカの切れない通貨の鎖

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アフリカに残る「フランスの影」

CFAフラン(Communauté Financière Africaine フラン)は、アフリカの旧フランス植民地で現在も使われている共通通貨である。通貨としての成立は1945年、第二次世界大戦後の混乱期にフランスが自国の植民地経済を安定させる目的で導入した。独立した国家が通貨を共有する構想は一見合理的に見えるが、この仕組みには今もなお根強い批判がある。

CFAフランは14カ国にまたがって流通しており、西アフリカと中央アフリカの2つの通貨圏に分かれている。西アフリカCFAフラン(XOF)はセネガルやコートジボワールなど8カ国、中央アフリカCFAフラン(XAF)はカメルーンやチャドなど6カ国で使用されている。見かけは似ていても、両者は別の中央銀行から発行され、相互流通もできない。

表向きの安定と裏側の支配構造

CFAフランの最大の特徴は、ユーロと固定された為替レートにある。1ユーロ=655.957CFAフランという固定相場は、通貨の安定性と対外信用を高める一方で、各国が独自の金融政策をとる余地を奪っている。加盟国は外貨準備の一定割合をフランスの中央銀行に預託する義務があり、実質的にフランスの金融網の中で生きている。

こうした構造のため、CFAフラン圏の国々は経済的に安定しているという評価も一部にはある。たしかにインフレは抑えられているし、共通通貨で域内貿易も円滑になっている。しかし、それと引き換えに各国は通貨主権をフランスに握られ続けており、「独立したはずの国家が、通貨面では今も間接的に支配されている」との批判は根強い。

Eco構想という夢と現実

こうしたフランス依存からの脱却を目指す動きも存在する。その象徴が「Eco(エコ)」という新通貨構想だ。これは西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が主導する通貨統一プロジェクトで、ユーロをモデルとした独自通貨を発行し、CFAフラン体制からの脱却を図るものだった。

当初は2020年に導入予定だったが、各国の経済状況や通貨政策の不一致、さらにナイジェリアとフランスの主導権争いなども重なり、導入は延期に次ぐ延期。現在も実現の見通しは立っていない。結局のところ、加盟国間の経済格差や政情不安が足かせとなり、理想と現実のギャップが浮き彫りになっている。

「信用」と「自由」は両立するのか?

CFAフランの問題は単なる通貨の話にとどまらない。それは国家の主権、独立、そして歴史的な植民地構造の再生産そのものである。信用ある通貨を維持するために、他国の保証に依存し続けるのか。それともリスクを背負ってでも、自らの手で経済運営を取り戻すのか。選択肢は簡単ではない。

「安定」と「自由」は、ときに相反するものである。CFAフラン圏の国々は、その狭間で揺れ続けている。そして今も、多くの国が植民地からの「形式的独立」から、本当の意味での「経済的独立」を模索している最中だ。

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