この記事では、一見対極に位置するように見える二つの政治勢力について、やや異なる視点から考察してみたい。多くの人にとって同意し難い見方かもしれないが、現代政治を理解する上で一考の価値があると思われる。
「分断を煽らない」と「日本人ファースト」の本質的類似性
表面的な違いを超えて
チームみらいの「分断を煽らない」と参政党の「日本人ファースト」は、一見すると正反対のメッセージに聞こえる。前者は融和的で包摂的、後者は排他的で対立的だ。
しかし、これらのスローガンが実際に機能する構造を検討すると、興味深い共通点が浮かび上がる。どちらも結局、既存の社会構造を前提として、その上での「解決」を提示している点だ。
支持基盤から見える真実
YouTube等の選挙分析によれば、チームみらいの支持層は都市部の高所得者層が中心とされる。一方、参政党の支持層には、現在の社会システムに大きな不満を抱く層が含まれる。
この事実は重要な示唆を与える。両者は異なる社会層の異なるニーズに応えているが、どちらも根本的な構造変革は志向していないという点で共通している。
「分断を煽らない」というメッセージの政治性
誰が困るのか、誰が安心するのか
「分断を煽らない」は確かに聞こえの良いメッセージだが、重要な問いがある:
- 分断を煽っているとされるのは誰なのか?
- 分断が煽られて本当に困るのは誰なのか?
論理的に考えれば、分断で最も困るのは現在の構造から利益を得ている層だ。貧者や構造的弱者にとって、分断は既に現実として存在している。
麻布から川崎への視線
チームみらいの事務所は麻布にある。ここから「分断を煽らない」と発信することの意味を考えてみたい。
麻布は日本有数の高級住宅街だ。一方、川崎は外国人問題をはじめとする社会的課題の最前線に位置する地域でもある。
麻布の事務所から川崎に向けて「分断を煽らない」と言うことは、現実として暴力的ではないだろうか。構造的格差の受益者側から、現場で実際に困難と向き合う人々に対する「説教」として機能する危険性がある。
技術万能主義という逃避
ハンコ問題が示すもの
チームみらいはAIやDXによる問題解決を掲げることが多い。しかし、技術で解決できる問題と、政治的・構造的要因による問題を区別する必要がある。
例えば、日本にはいまだにハンコ文化が残っている。これは技術的な問題だろうか?電子署名の技術は十分に成熟している。ハンコが残っているのは、技術的制約ではなく、政治的・構造的な要因によるものだ。
同様に、社会の分断も技術で解決できる問題ではない。根本的には誰が得をして誰が損をするかという政治の問題なのだ。
現実的な政治分析の必要性
支持基盤が示す政治的本質
政治勢力の真の性格は、その理念や政策よりも、実際に誰が支持しているかによって明らかになる。
もしチームみらいの支持が主に都市部高所得者層に偏っているなら、「分断を煽らない」というメッセージは事実上、現状維持を求める層への安心提供として機能していることになる。
構造的共犯関係
興味深いことに、チームみらいと参政党は表面的には対立しているが、実際には相互に補完的な機能を果たしている可能性がある:
- 参政党:不満層の怒りを政治的エネルギーに変換するが、根本的解決は提供しない
- チームみらい:富裕層の「平穏でいたい」という欲求に応えるが、構造的変革は避ける
結果として、どちらも既存の権力構造を温存する機能を持つ。
おわりに
この分析は、善悪の判断を目的とするものではない。両政治勢力の関係者に悪意があると主張するものでもない。
しかし、現代政治の機能的構造を理解するためには、表面的な政治的立場を超えた分析が必要だと考える。特に「良識的」とされる政治勢力については、その潜在的な政治的機能について市民的な検討が重要だろう。
政治は論理ではなく力学だ。誰がどのような利益を得るのか、どのような構造が温存されるのか。こうした現実的な視点なしには、真の政治的判断は困難だと思われる。