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中古食洗機を5000円で落札!NP-TCB4からNP-TCR4への買い替え体験記その3:クエン酸・重曹・塩素系による臭い除去の全記録

前回、中古食洗機の臭いの化学的メカニズムについて詳しく解説したが、今回はいよいよ実践編だ。理論を武器に、果たして生乾き臭に支配された食洗機を復活させることができるのか。闘いの全記録をお伝えしよう。

目次

前回

初期状態の絶望的な臭い

届いたNP-TCR4の臭いは、正直なところ想像以上にひどかった。庫内に鼻を近づけると、まさに「生乾きの洗濯物」そのものの臭いが立ちこめている。さらに困ったことに、この臭いは食洗機の外側にまで染み付いており、キッチンに置いておくだけで部屋の空気が重くなるような状況だった。

温度が上がると臭いが強まることも確認でき、これは明らかに内部に蓄積された有機物が加熱により気化していることを示している。前回解説した理論通り、複合的な臭気成分が食洗機の内部で生成されていることは間違いなかった。

まずは標準的な洗剤での試運転を行ったが、案の定、臭いに変化はない。むしろ温まったことで臭いが一時的に強くなったほどだ。これで確信した。表面的な清掃では解決不可能で、化学的なアプローチが必要だと。

第一段階:クエン酸洗浄との格闘

理論編で解説したクエン酸の効果を期待して、まずはクエン酸洗浄から開始した。使用したのは薬局で購入した一般的な掃除用クエン酸で、大さじ3杯(約45g)を庫内の底に直接振りかけて高温コースで空運転する。

1回目の洗浄が終了し、期待を込めて庫内を確認したが、残念ながら臭いは残ったままだった。ただし、完全に変化がないわけではなく、わずかに薄くなったような気もする。これは理論通り、一部の臭気成分が中和されたことを示しているのかもしれない。

2回目のクエン酸洗浄を実施。肝心の臭いについては、依然として強く残っている。

3回目のクエン酸洗浄を終えた時点で、ようやく「少しマシになったかも」という程度の変化を感じられるようになった。ただし、根本的な解決には程遠い状況だ。クエン酸による酸性処理では、アルカリ性臭気成分の中和と汚れの溶解は進んだものの、酸性臭気成分には対処しきれていないことが明らかになった。

第二段階:重曹洗浄での反撃

クエン酸で準備を整えたところで、いよいよ重曹の出番だ。重曹は酸性臭気成分の中和が期待できるため、クエン酸では除去しきれなかった有機酸系の臭いに効果があるはずだ。

重曹洗浄では大さじ3杯の重曹を庫内に投入し、同様に高温コースで空運転した。2回目の重曹洗浄を実施した時点で、臭いはやや薄くなった。ただし、完全に消失したわけではなく、まだ「すえたような臭い」が残っている。この時点で判断に迷ったが、重曹洗浄を追加するよりも、最終手段である塩素系漂白剤に移行することにした。

第三段階:塩素系漂白剤の威力と失敗

いよいよ最後の切り札、塩素系漂白剤の登場だ。使用したのは市販のキッチンブリーチで、水量を約10リットルと推定してキャップ約1杯分を庫内に投入した。安全のため、ミニキッチンを密閉して換気扇を回し、居室の窓を開けてから運転を開始した。

ところが、運転開始直後に予想外の事態が発生した。排水時に泡が発生しているのを確認したのだ。これは明らかに異常で、NP-TCR4の取扱説明書には「台所用液体洗剤で泡が出ると故障の原因になる」と明記されている。

実は、キッチンブリーチには次亜塩素酸ナトリウム以外に界面活性剤も含まれており、これが泡立ちの原因だった。一瞬運転を停止しようかと考えたが、既に始まってしまった以上、最後まで運転を続ける方が安全だと判断した。中途半端に停止すると、泡や薬剤が庫内に残留する可能性があるからだ。

幸い、運転は無事に完了し、機械的な故障は発生しなかった。ただし、肝心の臭い除去効果については、期待したほどの劇的な変化はなかった。確実に改善はしているものの、まだ臭いが残っている状況だ。

一晩の自然乾燥がもたらした意外な効果

塩素系洗浄後、庫内を開けっぱなしにして一晩自然乾燥させることにした。これは単純に機械を休ませる目的だったが、翌朝確認してみると意外な発見があった。

自然乾燥だけで、臭いが明らかに薄くなっているのだ。これは前回解説した通り、揮発性の臭気成分が空気中に拡散し、湿度の低下により雑菌の活動が抑制されたためと考えられる。化学的処理と物理的な換気の組み合わせが、予想以上に効果的だったのである。

実戦投入:食器洗いでの最終検証

理論的には改善したはずだが、実際に食器を洗ってみなければ本当の評価はできない。標準の粉末洗剤で一度空転させたあと、恐る恐る食器を投入し、標準コースで洗浄を開始した。

洗浄終了直後に庫内を確認すると、まだ臭いは残っているものの、食器自体に臭いが移ることはなかった。これは実用レベルでの成功を意味している。食器に臭いが移らない程度まで改善できれば、日常使用に支障はない。

さらに嬉しい発見として、洗浄後の食器は確実に清潔で、臭いの問題を除けば食洗機としての基本性能に全く問題がないことが確認できた。2023年製の品質は確実に2018年製を上回っており、カゴの使いやすさも含めて総合的にアップグレードを実感できた。

成功要因と反省点の分析

今回の臭い除去作戦を振り返ると、成功要因として段階的アプローチの有効性が挙げられる。単一の方法では除去困難な複合臭気に対して、化学的特性の異なる3つの処理を組み合わせることで、確実に改善効果を得ることができた。

一方で反省点として、塩素系漂白剤の選択ミスがある。界面活性剤を含まない粉末タイプの酸素系漂白剤を使用すべきだった。また、各段階での効果測定をより客観的に行う方法があれば、より科学的なアプローチが可能だったかもしれない。

最も重要な学びは、5000円未満の投資でここまでの改善が可能だということだ。完璧とは言えないものの、実用レベルまで復活させることができたのは、理論的背景を理解した上での体系的なアプローチがあったからこそだろう。

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