政治– category –
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地政学
国家はどこから来て、どこへ行くのか――二重内陸国から見た国家形成の本質
国家は“自然物”ではなく“人工物”である これまでの記事では、二重内陸国という地政学上の特殊な国家形態を起点に、リヒテンシュタインとウズベキスタンという対照的な2か国の事例を通じて、国家の成り立ちや外交姿勢、統治体制について考察してきました。また、独裁とは何か、というテーマを国家の発展段階という視点から掘り下げてきました... -
地政学
独裁とは何か――“悪”ではなく国家の段階か?
はじめに 現代の国際社会では、「独裁」という言葉はしばしばネガティブな意味で語られます。報道の自由の制限、反対派の弾圧、選挙の形骸化など、そのイメージは暗く、抑圧的な体制を連想させます。しかし一方で、独裁体制のもとで国家が安定し、発展の基盤を築いた例も少なくありません。今回の記事では、独裁を一概に善悪で語るのではなく... -
地政学
ウズベキスタン――火薬庫の真ん中で生きる国家
はじめに 前回までに、世界に2つしかない二重内陸国のうち、リヒテンシュタインの事例を紹介しました。今回はその対極とも言える、もう一つの国家――ウズベキスタンについて掘り下げていきます。面積、人口、歴史、地政学的環境のすべてにおいてリヒテンシュタインとはまったく異なる性質を持つこの国は、「火薬庫」中央アジアのど真ん中で、... -
地政学
リヒテンシュタイン――“守られし豆粒国家”の外交術
はじめに 前回の記事で、世界にはわずか2か国しか存在しない「二重内陸国」の存在について紹介しました。そのうちの一つが、ヨーロッパ中部に位置する小国リヒテンシュタインです。面積160平方キロメートル、人口約4万人という超小規模国家でありながら、独立国家として存続し、安定した経済と政治体制を維持しています。本稿では、この“豆粒... -
地政学
二重内陸国とは何か?――世界でたった2つの国家
はじめに 私たちは普段、海があることを当たり前のように感じています。特に日本のような島国では、海は生活や文化、経済に密接に結びついており、他国との接触や貿易の入口でもあります。しかし、世界には「内陸国」と呼ばれる、海に面していない国々も数多く存在します。内陸国になると、貿易において海港を使えず、周囲の国を経由しないと... -
経済
「自由貿易」神話と産業再建の必要性
自由貿易の理想と現実 自由貿易は、経済学的には非常に洗練された理論です。各国が比較優位に基づいて得意な産業に特化し、貿易によってお互いに利益を得るという考え方は、理屈としては正しく、実際に国際経済の成長を支えてきた要素の一つでもあります。 しかし、この理想がそのまま現実の政策として適用されたとき、問題が生じます。自由... -
経済
庶民にとっての現実:資産防衛と出口戦略
株式投資とインフレの落とし穴 現代の投資論では、「インフレには株式が強い」と語られることが多く、実際にS&P500などの株価指数は長期的には右肩上がりを描いてきました。しかし、これはあくまで通貨の信認が維持されていることを前提とした話です。 ドルの信認が揺らぐ状況では、株価の上昇自体が「名目値」にすぎず、実質的な購買力... -
経済
現代のドル体制に潜む矛盾とリスク
世界中に溢れたドルと信用の偏重 現代のドル体制は、アメリカが発行する通貨に対して世界中が商品や労働力を提供するという、非常に偏った構造の上に成り立っています。アメリカは自国の財政赤字をドルで補いながら、国際的な購買力を維持してきました。これは一見すると巧妙な仕組みですが、裏を返せば「ドルの信用」がすべての土台となって... -
経済
ドル本位体制の成立と現代の信用構造
金の代わりに“信用”が裏付けとなったドル 1971年のニクソン・ショックによって、アメリカは金とドルの交換義務を放棄しました。これにより、世界の通貨制度は金という物理的な裏付けを完全に失い、いわば“信用本位制”へと突入しました。以後、ドルの価値は「アメリカという国家への信頼」と「アメリカ経済の力」によって支えられることになり... -
経済
金本位制とブレトン・ウッズ協定とは何だったのか
金本位制の起源と仕組み 金本位制とは、通貨の価値が一定量の金と交換できることを保証する制度です。たとえば、1ドルが0.05オンスの金と交換できると定められていれば、ドル紙幣の価値はその金に裏打ちされたものとなります。これは、通貨の信用を国家の保証ではなく、金という普遍的な価値のある資源に基づかせる仕組みです。 この制度は19...