日本語配列の物理キーボードを、US配列のキーマップで使用する方法を説明します。Pop!_OSの独特な「入力ソース」の仕組みについても詳しく解説し、混乱しやすいポイントを明確にします。
目次
環境情報
- OS: Pop!_OS 22.04
- 物理キーボード: 日本語配列
- 論理配列: US配列(設定後)
Pop!_OSの「入力ソース」について理解する
一般的なLinuxとの違い
通常のLinuxでは:
- キーボードレイアウト(物理的なキー配置)
- インプットメソッド(日本語変換システム)
が別々に管理されます。
Pop!_OSでは:
- 両方とも「入力ソース」として同列に表示
- これが混乱の原因
実際の入力ソース画面
設定 → キーボード → 入力ソースで、以下のように表示されます:

入力ソース:
┌─────────────────┐
│ 英語 (US) │ ← キーボードレイアウト
├─────────────────┤
│ 日本語 (Mozc) │ ← インプットメソッド
└─────────────────┘
一見すると同じ種類の設定に見えますが、実際には全く違うものです。
設定前後の比較
日本語配列の場合
- Shift + 2 →
"(ダブルクォート) - Shift + 6 →
& - Shift + 7 →
'(シングルクォート) - @マーク → 別の位置
US配列の場合(設定後)
- Shift + 2 →
@(アットマーク) - Shift + 6 →
^ - Shift + 7 →
& - "マーク → Shift + ' の位置
Step 1: 設定の変更
設定アプリを開く
- アクティビティ(画面左上)をクリック
- 設定を検索して開く
キーボード設定へ移動
- 設定内でキーボードをクリック
- 入力ソースセクションを確認
US配列の追加
- 入力ソースの+ボタンをクリック
- 英語を選択
- 英語(アメリカ合衆国)を選択
- 追加をクリック
重要:日本語配列の削除
もし日本語(配列)が存在する場合:
- 日本語を選択
- −ボタンで削除
注意: 日本語 (Mozc) は削除しないでください。これは日本語入力システムです。
Step 2: 入力ソースの理解と確認
理想的な最終状態
入力ソース:
┌─────────────────┐
│ 英語 (US) │ ← キーボードレイアウト(US配列)
├─────────────────┤
│ 日本語 (Mozc) │ ← 日本語入力システム
└─────────────────┘
それぞれの役割
英語 (US)
- 種類: キーボードレイアウト
- 役割: 物理キーとシンボルの対応関係
- 例: Shift + 2 = @
日本語 (Mozc)
- 種類: インプットメソッド
- 役割: ローマ字→ひらがな変換
- 例: konnichiwa → こんにちは
コマンドでの確認
# 現在のキーボード設定
setxkbmap -query
# 入力ソース設定
gsettings get org.gnome.desktop.input-sources sources
期待する出力:
# setxkbmap -query
layout: us
# gsettings(英語US + 日本語Mozc)
[('xkb', 'us'), ('ibus', 'mozc-jp')]
物理的な動作確認
以下のキーを実際に押して確認:
- Shift + 2 →
@が出力される - Shift + 6 →
^が出力される - Shift + 7 →
&が出力される
Step 3: よくある混乱と注意点
混乱ポイント1: 同じ「入力ソース」なのに違う種類
Pop!_OSでは以下が同列に表示されます:
- 英語 (US) = キーボードレイアウト
- 英語 (UK) = キーボードレイアウト
- ドイツ語 = キーボードレイアウト
- 日本語 = キーボードレイアウト
- 日本語 (Mozc) = インプットメソッド
- 中国語 (Pinyin) = インプットメソッド
実際には全く違う種類の設定が混在しています。
混乱ポイント2: レイアウト変更の副作用
キーボードレイアウトを変更すると:
setxkbmapでの設定(Ctrl/Capsスワップなど)がリセットされる- 最後に選択したレイアウトが有効になる
注意点: 削除する項目を間違えない
- 削除するもの: 日本語(キーボードレイアウト)
- 残すもの: 日本語 (Mozc)(インプットメソッド)
Step 4: 日本語入力との併用
使い分け
設定完了後の使い分け:
- 英語 (US): 英語・記号入力(US配列)
- 日本語 (Mozc): 日本語入力(US配列ベース)
切り替え方法
- Super + Space: 入力ソース切り替え
- または無変換・変換キーでのカスタム切り替え(別途設定が必要)
トラブルシューティング
設定が反映されない場合
ログアウト・ログイン
gnome-session-quit
強制的なキーボード設定
setxkbmap us
複数のキーボードレイアウトがある場合
問題: 日本語配列とUS配列が両方存在 解決: 不要な方(通常は日本語配列)を削除
Ctrl/Capsスワップがリセットされる場合
原因: キーボードレイアウト変更による副作用 対策: 自動起動スクリプトでの再適用
設定を元に戻す方法
日本語配列に戻す場合
- 設定 → キーボード → 入力ソース
- +ボタンで日本語を追加
- 英語(アメリカ合衆国)を削除
コマンドでの変更
# 日本語配列に戻す
setxkbmap jp
まとめ
Pop!_OSの特徴
- 入力ソース: キーボードレイアウトとインプットメソッドを統一表示
- 混乱しやすい: 異なる種類の設定が同列に並ぶ
- 最後勝ち: 最後に選択したキーボードレイアウトが有効
設定のポイント
- 設定 → キーボード → 入力ソース
- 英語(アメリカ合衆国)を追加
- 日本語(配列)を削除、日本語 (Mozc) は保持
利点
- プログラミング: 記号の位置がUS配列準拠
- 国際的な互換性: 他の環境との一貫性
- 日本語入力: ibus-mozcとの併用可能
注意点
- 入力ソースの種類を理解して設定
- 不要なレイアウトは削除
- 副作用(設定リセット)に注意
この設定により、物理的には日本語キーボードでありながら、論理的にはUS配列として快適に使用できます。Pop!_OSの独特な仕様を理解することで、混乱せずに設定・管理が可能になります。