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古代メソポタミア文明:シュメール都市国家の文化

シュメール都市国家(ウル、ウルク、ラガシュ、ニップルなど)では、高度な都市文明が発達し、文字・宗教・芸術・科学などの多方面にわたる文化が形成された。
以下に、シュメール文化の主な特徴を紹介する。


目次

1. 文字と文学

(1) くさび形文字(Cuneiform Writing)

  • 世界最古の文字の一つで、紀元前3200年頃に発明された。
  • 粘土板に刻まれ、交易・法律・歴史・文学の記録に使用された。
  • 初期は象形文字に近かったが、徐々に記号化され、楔(くさび)の形になった。

(2) 『ギルガメシュ叙事詩』

  • 世界最古の文学作品の一つ。
  • ウルク王 ギルガメシュ の冒険と「不死を求める旅」がテーマ。
  • 英雄譚や人間の生死に関する哲学的思索を含む。

文字の発明によって、歴史や神話が記録され、後世に伝わるようになった。


2. 宗教と神話

(1) 多神教の信仰

  • シュメール人は多神教を信仰し、都市ごとに守護神を持っていた。
  • 主要な神々:
    • エンリル(Enlil)…風と嵐の神、最高神の一柱。
    • エンキ(Enki)…知恵・水・創造の神。
    • イナンナ(Inanna)…愛と戦争の女神(後のイシュタル)。
    • ウトゥ(Utu)…太陽神、正義を司る。

(2) 神権政治

  • 王は神の代理人として統治した。
  • 宗教と政治が密接に結びつき、王の権威を神々からの授かりものとした。

(3) ジッグラト(Ziggurat)

  • 神々に仕えるための巨大な階段状の神殿。
  • 例:「ウルのジッグラト」は、現在も遺跡が残る。
  • 神殿は都市の中心に位置し、宗教的・行政的な機能を果たした。

シュメール人の信仰は、後のバビロニア・アッシリアの宗教にも影響を与えた。


3. 法律と社会制度

(1) 法律の発展

  • シュメール人は、世界最古の法典の一つ 「ウル・ナンム法典」(紀元前2100年頃)を制定した。
    • 「目には目を」の原則が後のハンムラビ法典にも影響を与えた。
    • 罰則の明文化と契約社会の成立。

社会秩序を維持するための法律が整備された。

(2) 階級制度

  • 王・神官(貴族)
  • 商人・職人・農民
  • 奴隷(借金や戦争捕虜など)

明確な身分制度があり、経済・軍事・宗教が絡み合っていた。


4. 科学・数学・天文学

(1) 60進法の発明

  • シュメール人は「60進法」を使用し、現在の時間(1時間=60分)や角度(360度)の基礎となった。
  • 測量や建築にも応用された。

(2) 天文学

  • 太陽・月・惑星の観測を行い、暦を作成。
  • 1年を12か月に分ける太陰暦を使用。
  • 占星術も発展し、王の治世や戦争の予兆を占った。

数学・天文学の知識は、後のバビロニア文明に受け継がれた。


5. 芸術と工芸

(1) 彫刻・レリーフ

  • 神像や神殿の装飾が発展。
  • 円筒印章(Cylinder Seal)
    • 粘土板に押し付けて模様を刻むための印章。
    • 契約書や所有権を証明するために使用された。

(2) 建築技術

  • 日干しレンガを使用した建築が発達。
  • ジッグラト(神殿)や都市の城壁を建設。
  • 水路や灌漑施設も整備し、農業を発展させた。

建築・工芸技術は、後のメソポタミア文明全体に影響を与えた。


6. まとめ

シュメール都市国家は、人類最古の都市文明を築き、後の文明の基盤となる文化を発展させた。

分野シュメールの貢献
文字くさび形文字、粘土板記録、ギルガメシュ叙事詩
宗教多神教、ジッグラト、神権政治
法律ウル・ナンム法典、社会秩序の確立
数学60進法、測量、角度・時間の基礎
天文学太陰暦、惑星観測、占星術
芸術・建築レリーフ、円筒印章、レンガ建築

シュメール文明は、都市国家の発展とともに、人類の知識や社会制度を大きく前進させた。
その影響は、バビロニア・アッシリア・ペルシア、さらには現代社会にも及んでいる。

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