MENU

卵の値段が変わらない奇跡と、口座の残高が同じでも減っているかもしれない不安

私たちは日々、スーパーで買い物をします。卵や牛乳、パンなど、いつもの商品がいつもの場所に、いつもの価格で並んでいます。昨日買った卵が、今日も同じ値段で売られている。

この「当たり前」がどれほどすごいことか、ふだんはあまり意識されることはありません。


目次

卵の価格が変わらないという奇跡

スーパーに行くと、卵の値段はたいてい昨日と同じです。100円の卵は、今日も100円。何日かに一度、セールになったり、少し高くなったりすることはありますが、急に倍の値段になることはありません。

けれども、実はその「いつもと同じ値段」が保たれていることは、当たり前ではありません。

たとえば、卵を作るためにはエサや水、光熱費がかかります。それを農家の人が世話をして育てています。そして卵ができたら、トラックに乗せてお店まで運び、スーパーの人が棚に並べてくれます。

その間に必要なのは、トラックを動かすガソリン、スタッフの人件費、電気代、パッケージに使う紙やビニール、そして外国から来るエサや材料を買うためのお金など、たくさんのものです。

実はそれらの値段は、毎日のように少しずつ変わっています。たとえば、ガソリンの値段が上がったり、海外からの輸入品の価格が変わったり、円とドルの交換レートが変わったりすると、卵を作ってお店に並べるまでのコストが増えるのです。

それでも、私たちがスーパーで見る卵の値段があまり変わらないのは、農家の人や運送業者、お店の人たちが工夫したり、企業が一時的にコストを引き受けたりして、価格を安定させているからです。

つまり、毎日同じように見える卵の価格の裏では、たくさんの人たちと仕組みが働いて、値上がりを防ぐための努力がされているということなのです。それは決して、当たり前のことではありません。


変わらない数字への疑い

あなたの銀行口座に入っているお金の金額は、昨日と今日で変わらないかもしれません。たとえば、10万円がずっと10万円のまま、減ってもいないし増えてもいない。いかにも「安心できる」ように見えますよね。

でも本当にそうでしょうか?

ここで少しだけ、考えてみてください。

たとえば昨日は、卵が1パック200円だったとします。そうすると、10万円あれば卵が500パック買えますよね。

ところが今日、卵の値段が220円に上がっていたら、同じ10万円で買えるのは約454パックになります。

つまり、お金の数字は変わっていなくても、それで買えるモノの量は減ってしまっているのです。

このように、物の値段(=物価)が上がると、お金の「見た目」は同じでも、実際の価値は下がってしまうのです。これを「お金の価値が目減りしている」と言います。

だから、「昨日と同じ金額が口座にある」ことだけで安心してしまうのは、少し危ないかもしれません。本当に大切なのは、「そのお金で今も同じだけのモノが買えるのか」ということなのです。

安定と目減りは表裏一体

卵の値段が変わらないことに安心を覚えつつも、同じ100万円が同じだけの価値を持ち続けているとは限らない。こうした現象は、見た目の安定の裏にある「相対的な価値の変化」に目を向けるきっかけになります。

価格の安定とは、国家、企業、流通、消費者といった社会の構成要素が信頼を共有し続けていることの結果です。そしてその信頼が揺らげば、卵の価格も、あなたの預金の価値も、変わらずにはいられません。

最後に

卵の価格が昨日と同じだったことに小さな感動を覚えつつ、同時に、自分の資産が本当にその価値を保っているか、立ち止まって考える必要があります。

見た目が変わらないことに安心するのではなく、その背後にある構造や変化を冷静に観察すること。現代において、自分の暮らしとお金を守るためには、そうした視点こそが重要になっているのかもしれません。

目次