MENU

「できるできないじゃなくて、どうやったらできるか考えよう」がうまくいくケース、うまくいかないケース

目次

はじめに:一見前向きなこの言葉の裏側

「できるできないじゃなくて、どうやったらできるか考えよう」

職場や学校、プロジェクトの現場などで、一度は耳にしたことのあるこの言葉。前向きで、挑戦を促すように聞こえます。実際、困難な課題に向き合うとき、この言葉に背中を押された経験がある方も多いかもしれません。

しかし同時に、この言葉が誰かを追い詰めたり、現場の士気を下げてしまった場面に立ち会った人もいるのではないでしょうか。
言葉そのものが良い悪いという話ではなく、「誰が、誰に向けて、どのような関係性と状況で使うか」が、この言葉の意味を大きく左右するのです。


ストーリー:ある現場で起きたすれ違い

あるIT開発の現場で、新機能の追加が検討されていました。
現場のエンジニアたちは、既存のシステム構造やセキュリティ要件を踏まえ、「今回は難しい」という結論を出していました。ところが、会議の終盤、プロジェクトマネージャーがこう言いました。

「できるかできないかじゃない。どうやったらできるかを考えてみてくれ」

一見するとチームを鼓舞する発言ですが、会議後、現場の空気は重く沈んでいました。なぜならこのマネージャーは、技術的な事情を深く理解しておらず、プロジェクトの実行段階には関与しない立場。しかも、過去に無理な指示で問題が起きた際には現場に責任を押し付けたこともありました。

「どうせまた、やらされるのはこっちだよ……」

そんなつぶやきが、メンバーの口から漏れていました。


言葉の力は「誰が、誰に、どの立場で」使うかで変わる

同じ言葉でも、それが希望に聞こえるか、プレッシャーに聞こえるかは大きく異なります。
違いを生むのは、「責任を引き受ける覚悟」「相手との信頼関係」「現実を理解した上での発言かどうか」という3つの要素です。

例えば、自分自身に向けてこの言葉を使う場合は、内なる挑戦心を引き出す強力なモチベーションになります。また、チーム内の信頼関係が強く、上司が「結果は自分が責任を取る」と明言できる環境では、メンバーも安心して前向きに挑戦できます。

一方で、責任を負わない立場から、状況を理解せずにこの言葉を投げかけると、それはただの精神論の押し付けとなってしまいます。


有効なケース・逆効果になるケースの整理

ここで、これまでの考察をもとに、「有効なケース」「逆効果になるケース」「微妙なケース」を簡単に整理しておきます。

プラスになるケース

誰が誰に責任覚悟信頼関係成果
自分自分自己成長や突破力
リーダーチーム挑戦意欲を高める
経験ある上司部下安心感と実行力を両立

マイナスになるケース

誰が誰に責任覚悟信頼関係結果
外部・非当事者現場×××不信感、疲弊、反発
無責任な上司チーム×××プレッシャー、無理の強要
経験のない管理者専門職××判断軽視によるモチベーション低下

微妙なケース(信頼関係に左右される)

誰が誰に責任覚悟信頼関係備考
責任ある上司現場△~○言葉の重みと支援が必要
同僚仲間×「一緒にやろう」の姿勢が大事

結論:この言葉は、使い方を間違えると“劇薬”になる

「できるできないじゃなくて、どうやったらできるか考えよう」

この言葉は、人を動かす力を持つ一方で、使い方を間違えると人を傷つけ、組織の信頼関係を壊してしまいます。
だからこそ、**「誰が、誰に向けて、どんな責任と覚悟を持って言うのか」**が問われるのです。

たとえば、信頼されているリーダーが、「もし失敗しても自分が責任を取る」と言える覚悟を持ってこの言葉を使えば、それは人を前向きにする力になります。

一方、自分がリスクも責任も取らない立場で、ただ言葉だけを投げかけるならば、それはただの負担の押しつけです。


最後に:この言葉を使う前に、自分に問いたいこと

  • 本当に相手の状況を理解しているか?
  • 自分もその挑戦に参加する覚悟があるか?
  • 失敗したとき、自分は責任を引き受けられるか?
  • この言葉が、相手にとって希望になるか、圧力になるか?

これらの問いに「はい」と自信をもって答えられるとき、この言葉は初めて「力」になります。

目次