狂気が始まった。月額200ドルという狂気が。
エンジニアたちが我先にとサブスクリプションに課金している。まるで投資だと言いながら、年間36万円を注ぎ込む。AIを使いこなさなければ時代に取り残される、という恐怖に駆られて。
しかし、問いかけよう。それで収入は増えたのか?
確かな支出が増えた人は無数にいる。しかし、それで稼げるようになったという人は、ほとんど見えない。AIは勝手に顧客を見つけて勝手に稼いできてはくれない。現実の商売は、そんなに甘いものではない。
コスト削減という名の自己欺瞞も横行している。今まで人に支払われていた対価が、アメリカのビッグテックと電力会社に流れているだけ。社会全体では何も良くなっていない。むしろ若年労働者の雇用が奪われ、市場は厳しくなっている。
エンジニアは今まで支払っていなかったサブスク代を支払うようになった一方で、自分たちの雇用環境は悪化している。皮肉な話だ。
技術革新それ自体は、人を幸せにしない。包丁が人を殺さないように、包丁が人を幸せにするわけでもない。人を殺すのも幸せにするのも、結局は人である。技術はただそこにあるだけ。
産業革命の労働者は、自分が作ったものを買えなかった。20世紀になって、ようやく労働者が作ったものを買える時代が来た。しかし、AI革命で作る人と消費する人は一致しているだろうか。とてもそうは見えない。
みんなそれがわかっているからこそ、自分だけは取り残されまいと年間数十万の利用料を払う。しかし、AIの利用自体は消費である。AIを使って何かを作らねばならないが、それは誰かに求められたものだろうか。
これから100万個のピラミッドができる。
現代の仕事の多くは、実はピラミッド作りだった。それをAIが顕現化させる。ピラミッドは少ないから価値があるように見える。しかし100万個あったら、ただの邪魔なゴミでしかない。
クッキーの同意ポップアップを見よ。誰も真剣に読まない無意味な儀式。しかしAIがそのコードを書き、AIブラウザが自動的に同意する。AIが作ったポリシーにAIが同意する。人間は一切介在しない。とても効率的だ。これでもっとたくさんの同意ポップアップが作れる。
100万の同意ポップアップをAIが作り、AIが同意する。誰でも愚かだとわかる光景。しかし疑問が浮かぶ。そもそも同意ポップアップなど一つもいらなかったのではないか?
AIによる偽の効率化が、こうした無意味さを白日の下にさらしていく。我々が「仕事」だと思っていたものの多くが、実はピラミッド作りだったことを。
人生は一度しかない。社会がいつか立ち返ったとしても、失った時間は取り戻せない。走馬灯が同意ポップアップで埋まったら嫌だろう?
AIに金を払えるなら、それほど逼迫してはいないのだろう。ならば一度立ち止まって考えてみてはどうか。同意ポップアップではなく、ピラミッドではなく、本当に欲しいものを作るために。
月額200ドルを躊躇うのが、市民として健全な感覚ではないだろうか。その金で、現実に手に取れるミニPCでも買った方がまだマシかもしれない。
AIは確かに凄いものだ。しかし深呼吸をして問おう。それで一体何をしようというのか。現代のピラミッド建設者になりたいのか、それとも本当に価値あるものを作りたいのか。
選択は、あなた次第だ。