電子メモパッド「ブギーボード」を衝動買いしたものの、気づいたら引き出しの奥で眠っている...そんな経験をした人は多いのではないでしょうか。
「書いて消せる未来のメモ帳!」という触れ込みに魅力を感じて購入したけれど、実際使ってみると「結局ノートの方が使いやすい」となってしまう。4000円もしたのに、なんとも言えない後悔が残る。
そこで今回は、ブギーパッドを本当に有効活用している人たちの使い方を徹底的に調査し、この中途半端なガジェットの真価を探ってみました。
実際の活用例:想像以上に限定的だった現実
まず、ネット上で実際にブギーパッドを使いこなしている人の声を集めてみました。
暗記学習での革命的活用法
最も興味深かったのが、キングジム社員の暗記活用法です。「ハングル語を覚えようとノートに大量に書き込んでいたときよりも、ブギーボードを使って『3回書く→消す→もう1度書く』という方法を身に付けてからのほうが、短時間で覚えられるようになりました」
これは認知心理学の「想起練習」という概念と一致しており、「書いたものをパッと消し、思い起こす」作業が記憶の定着を促進するのです。
日々のTODO管理
文房具ブロガーの報告では、上司が「コツコツとTODOメモとして書き留めて、1日の終わりには消して帰るというサイクル」で活用している例がありました。
個人情報を扱う接客業務
コールセンターや携帯ショップなどで、顧客情報を一時的にメモし、目の前で消去することで安心感を提供する用途。「残らない」ことに価値がある使い方です。
なぜ他の用途ではノートに負けるのか
調査を進めるうちに、ブギーパッドが苦手な領域も明確になりました。
冷蔵庫の伝言板として使う? → 紙とマグネットの方が安くて、汚れても捨てられる 買い物リストとして使う? → 紙の方が安く、雨に濡れても平気 会議メモとして使う? → ノートの方が保存でき、複数ページ使える 計算用紙として使う? → 裏紙で十分、コストが見合わない
結局のところ、「普通のメモ用途」では既存の紙製品に勝てないのが現実でした。
ブギーパッドが真価を発揮する4つの領域
分析の結果、ブギーパッドがノートや他の手段に勝てる領域は、実は4つに限定されることがわかりました。
1.「消す」行為そのものに意味がある用途
暗記での想起練習がその典型例。見えていたものが消える、というのは紙でも相当することはできるかもしれませんが、ブギーパッドのほうが手軽かつ特徴的です。
2.「残らない」ことそのものに意味がある用途
個人情報の筆談、機密性のある一時メモ、心理的に「痕跡を残したくない」場面で威力を発揮。
3. 書き味自体に惚れ込む
独特のなめらかさとコントラスト、筆圧による線の太さ変化など、デジタルなのにアナログっぽい感触を好む人にとっては代替不可能。黒板のような表示も印象的。
4. 独特の存在感を活かした掲示板的価値
ブギーパッドには、独特の存在感があります。TODOリストとして使っている人の本質は、実は「目立つ」ことにあります。
普通のメモ用紙だと他の書類に紛れたり、存在感が薄くて見落としがちです。一方、ブギーパッドは一定の厚みと重量があり、黒い画面に光る文字で圧倒的に目立ちます。どこにでもあるものではなく、そこにあるというだけで一定の価値が生じ得ます。ホワイトボードが目立つのと同じような効果です。
結論:ニッチな価値を理解できるかが分かれ目
ブギーパッドは決して「万能なデジタルメモ帳」ではありません。むしろ、非常に限定的な用途でのみ真価を発揮する、極めて特殊なガジェットです。
上記4つの領域のいずれかにピンと来る人にとっては4000円の価値があるかもしれません。一方、「なんとなく便利そう」という理由で購入すると、高確率で引き出しの肥やしになってしまうでしょう。しかしまず使って見ないとわからない類のプロダクトでもあります。まずは安価な電子メモパッドから始めてみてもよいかもしれません。