Red Pitayaの任意波形発生器(ASG)を使う際、波形生成の設定として「周期内サイクル数」「繰り返し回数」「遅延時間」という3つのパラメータが登場します。一見似たように見えるこれらのパラメータですが、それぞれ異なる目的で使用され、波形生成の挙動を詳細に制御する役割を持っています。本記事では、この3つのパラメータの違いと役割を初心者にもわかりやすく解説します。
1. 周期内サイクル数(ncyc
)
**周期内サイクル数(ncyc
)**は、波形データを1回の波形出力で何周期生成するかを指定するパラメータです。
役割
1回の波形生成中に、波形データを繰り返す回数を制御します。波形データを複数回繰り返すことで、特定の長さの波形を作ることができます。
設定の例
ncyc = 1
: 波形データを1周期分だけ出力します。ncyc = 10
: 波形データを10周期分繰り返して出力します。
使用例
- 短いパルスを生成する場合は、
ncyc
を小さく設定します。 - 長い一定の波形を出力する場合は、
ncyc
を大きく設定します。
2. 繰り返し回数(rnum
)
繰り返し回数(rnum
)は、波形全体の繰り返し回数を指定するパラメータです。
役割
1回の波形出力が完了した後に、波形全体を繰り返す回数を制御します。波形と波形の間に遅延時間(rdly
)を挟むことも可能です。
設定の例
rnum = 1
: 波形を1回だけ出力します。rnum = 5
: 波形を5回繰り返して出力します。
使用例
- 繰り返し回数を指定することで、パルス列やトレイン波形を作成することができます。
3. 遅延時間(rdly
)
遅延時間(rdly
)は、波形の繰り返し間隔を制御するパラメータです。
役割
繰り返し回数(rnum
)を設定した際に、波形と波形の間に指定した時間分の遅延を追加します。遅延時間はDACのクロック周波数に基づいて設定します。
設定の例
rdly = 0
: 波形を連続して繰り返します(遅延なし)。rdly = 250000
: 1ms(DACクロック250MHzの場合)の遅延を挿入します。
使用例
- パルスの間隔を調整して、トリガ信号に応じた動作をシミュレーションできます。
3つのパラメータの違いを具体例で解説
シナリオ1: 1周期の波形を10回連続で出力
- 設定例:
ncyc = 1
(1周期の波形)rnum = 10
(10回繰り返す)rdly = 0
(遅延なし)
- 結果: 波形が途切れることなく10回連続で出力されます。
シナリオ2: 5周期の波形を3回繰り返して、間に1msの遅延を挿入
- 設定例:
ncyc = 5
(1出力で5周期の波形を生成)rnum = 3
(3回繰り返す)rdly = 250000
(1msの遅延)
- 結果: 波形データが5周期分出力された後、1msの遅延を挟み、これを3回繰り返します。
波形生成の挙動を視覚化
パラメータ | 設定例 | 動作内容 |
---|---|---|
ncyc | 3 | 1回の波形出力で3周期の波形を生成 |
rnum | 2 | 波形全体を2回繰り返す |
rdly | 500000 | 繰り返し間に2msの遅延を挿入(DACクロック250MHzの場合) |
上記の設定では、次のような挙動になります:
- 波形データを3周期分出力。
- 2msの遅延を挿入。
- 再度3周期分の波形を出力。
- 完了。
3つのパラメータの役割のまとめ
パラメータ | 説明 | 目的 |
---|---|---|
ncyc | 波形データの1出力内での繰り返し回数 | 波形の長さを制御する |
rnum | 波形全体を何回繰り返すか | 繰り返し回数を制御する |
rdly | 波形と波形の間に挿入する遅延時間 | 繰り返し間隔を制御する |
実際の応用例
- 短いトレイン波形を生成:
- 目的: 1周期の波形を10回繰り返してパルス列を生成。
- 設定:
ncyc = 1, rnum = 10, rdly = 0
- トリガシグナル付きの動作シミュレーション:
- 目的: 5周期の波形を間隔を空けて繰り返し出力。
- 設定:
ncyc = 5, rnum = 3, rdly = 250000
おわりに
Red PitayaのASGは、これらのパラメータを自由に設定することで、非常に柔軟な波形生成が可能です。「周期内サイクル数」「繰り返し回数」「遅延時間」の違いを理解し、目的に応じた設定を行うことで、波形生成の可能性を広げましょう。最初は簡単な設定から試し、徐々に複雑な波形生成に挑戦してみてください!