FPGA設計やハードウェア設計を始めたばかりの人にとって、「トライステート制御」という言葉は耳慣れないものかもしれません。しかし、ハードウェア設計では重要な概念の一つです。この記事では、初心者にもわかりやすくトライステート制御の基本とその用途を解説します。
トライステートとは?
トライステート(Tri-State)は、その名の通り信号が3つの状態を持つことを意味します。通常のデジタル信号には「High(1)」と「Low(0)」の2つの状態がありますが、トライステートではこれに加えて「高インピーダンス状態(High-Z)」という第3の状態があります。
高インピーダンス状態とは?
高インピーダンス状態(High-Z)は、出力が無効化されている状態を指します。この状態では、信号線に接続されている出力ピンが「電気的に切り離されている」ように振る舞い、他のデバイスがその信号線を使用できるようになります。
- High(1): 信号線に論理1を出力する。
- Low(0): 信号線に論理0を出力する。
- High-Z: 信号線に何も出力しない(「無効」状態)。
トライステート制御の用途
1. バスの共有
複数のデバイスが同じ信号線を共有する場合、トライステート制御が必要です。例えば、FPGAの複数のモジュールが1本のデータバスにアクセスするとき、どのモジュールがデータバスを使用しているのかを制御する必要があります。このとき、未使用のモジュールは高インピーダンス状態にしておくことで、他のモジュールがバスを使用できるようにします。
2. 外部デバイスとの接続
FPGAが外部デバイス(例えばマイコンやメモリチップ)と通信するとき、信号線の方向(送信または受信)を切り替える必要があります。この場合もトライステート制御が活躍します。
3. 入力と出力の切り替え
トライステート制御を使えば、1本のピンを入力と出力の両方で使うことができます。例えば、GPIO(汎用入出力ピン)を使用してデバイスとの通信を行う場合、入力と出力を切り替えることで柔軟な制御が可能になります。
トライステート制御の仕組み
トライステート制御では、通常「イネーブル信号」と呼ばれる制御信号を使用して出力を切り替えます。
回路図で見るトライステート
以下のようなトライステートバッファが基本的な構成です:
+-----------+
Input -->| |--> Output
Enable -->| Tri-State |
+-----------+
- Enable = 1: 入力信号がそのまま出力される(HighまたはLow)。
- Enable = 0: 出力が高インピーダンス状態(High-Z)になる。
FPGAでのトライステート制御
FPGAでは、トライステート制御はGPIOや外部接続信号で主に使われます。
例:Xilinx AXI GPIO
XilinxのFPGAでAXI GPIOを使用する場合、トライステート制御はgpio_io_t
ピンで行われます。このピンは、出力が有効かどうかを制御します。
gpio_io_t = 1
:ピンが高インピーダンス状態になる(出力無効)。gpio_io_t = 0
:ピンが出力を有効にする(HighまたはLow)。
Verilogでの記述例
module tristate_example(
input wire enable,
input wire in_signal,
output wire out_signal,
inout wire bus
);
assign bus = enable ? in_signal : 1'bz; // トライステート制御
assign out_signal = bus; // バスの値を読み取る
endmodule
注意点
トライステート制御を正しく使用するには、以下のポイントに注意してください:
- 競合の回避 複数のデバイスが同時に同じ信号線にデータを出力しないようにする必要があります。競合が発生すると、信号が不安定になる可能性があります。
- タイミングの考慮 トライステートの切り替えにはタイミングの調整が重要です。不適切なタイミングで切り替えると、信号が正しく伝達されないことがあります。
- ツールの制約 現代のFPGAツールでは、内部ロジックのトライステートは合成ツールによりサポートされないことが一般的です。その場合、マルチプレクサ(MUX)などを使用して同等の動作を実現します。
まとめ
トライステート制御は、ハードウェア設計における信号共有や柔軟な入出力を実現するための重要な概念です。FPGA設計でも特にGPIOや外部デバイスとの通信で役立つので、基礎をしっかり理解しておきましょう。
これからの設計の中で「トライステート」という言葉を見かけたら、この記事を思い出してみてください。