はじめに
金融所得増税という言葉を聞くと、多くの人は「投資家や富裕層に関係するもの」と考えがちです。しかし、実際にはこの増税が全ての人に影響を及ぼします。
日本の労働者の大半は株式会社で働いています。そのため、金融所得増税が企業に及ぼす影響を理解すれば、この政策が決して他人事ではないことが分かるでしょう。
1. 金融所得増税とは?
金融所得増税とは、株式の売却益(キャピタルゲイン)や配当金にかかる税率を引き上げることを指します。現在、日本では金融所得に対して約20.315%の税率が適用されていますが、これを引き上げようとする動きがあります。
政府はこの増税を「高所得者の負担増」として説明しますが、実際には日本経済全体に悪影響を及ぼすのです。
2. 企業価値の低下と従業員への影響
金融所得増税が導入されると、株式投資の魅力が低下し、企業の株価が下落します。株価が下がると、企業の価値も下がります。では、企業価値の低下が従業員にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
(1) 企業の資金調達が難しくなる
企業は新しい事業を始めたり、成長投資を行ったりするために、株式市場から資金を調達します。しかし、金融所得増税によって株価が下がると、新株を発行して資金を集めることが難しくなります。
資金調達が難しくなると、企業は新しいプロジェクトや採用を控えるようになります。 その結果、
- 昇給・ボーナスの抑制
- 新卒採用や中途採用の減少
- リストラやコスト削減の加速
といった形で、従業員の働く環境が悪化する可能性があります。
(2) 配当圧力の増加
株価が下落すると、投資家は「せめて配当金で利益を確保したい」と考えます。すると、企業は利益を内部留保や賃上げではなく、配当に回さなければならない圧力を受けます。
つまり、
- 企業の利益が増えても、従業員の給与に回る割合が減る
- 長期的に、賃上げや福利厚生の充実が難しくなる
という状況が生まれます。
(3) 業績悪化で賃上げが困難に
企業価値が低下し、利益が減少すると、当然ながら従業員の賃上げも困難になります。特に、経営が厳しくなればなるほど、
- 賞与(ボーナス)の削減
- 残業代の削減や勤務時間の見直し
- リストラの加速
といった形で、働く人たちの生活に直接的な影響が出る可能性が高まります。
3. 日本人のほとんどが影響を受ける
日本の労働者のほとんどは、株式会社に勤めています。つまり、金融所得増税による株価下落の影響は、日本全国の労働者に波及するのです。
具体的には、
- 大企業の正社員:昇給やボーナスが抑制される
- 中小企業の従業員:取引先(大企業)の業績悪化の影響を受ける
- 非正規雇用(パート・契約社員):雇用環境が悪化し、仕事が減る
- 新卒や転職希望者:採用が減り、雇用機会が縮小する
このように、金融所得増税は「投資家だけの問題」ではなく、日本経済全体の問題なのです。
4. 「手取りを減らす」効果に
或る政党は「手取りを増やす」と主張しています。しかし、金融所得増税が実現すると、
- 企業の業績悪化 → 賃上げが難しくなる
- 採用が減る → 労働市場が冷え込む
- 配当圧力が増し、給与に回る分が減る
という流れになり、結果として日本全体の「手取り」が減る可能性が高いのです。
まとめ
金融所得増税は、
✅ 株式会社に勤める全員に影響を及ぼす
✅ 企業価値を低下させ、昇給や雇用環境を悪化させる
✅ 結果的に、日本人の手取りを減らす要因となる
「投資家だけの問題」と考えず、自分自身の生活にも影響を及ぼす政策であることを、もっと多くの人が理解するべきです。
このまま金融所得増税が実施されれば、手取りが増えるどころか、むしろ減るリスクのほうが高いのです。